開幕ローテーションに入った山井は目を覆いたくなるようなピッチングが続いて早々に離脱した。勝てないどころか試合を作ることしかできない。2軍に落ちて当然だった。

思えば山井はそんなことの繰り返し。ポテンシャルの高さから常に期待をされて今年で9年目になる。永遠の若手といわれる芸人のようだ。吉本興業で当てはめるなら野性爆弾が近い。いまだ年間通して1軍にいたことはない。時折、神がかったパフォーマンスを見せる投手である。魅せる投手でもある。縦に落ちるスライダーが決まる日は手をつけられない。しかし山井の先発の日は基本、捨て試合と思ったほうが、中日ファンにとって気が楽だ。なにしろ、しょっぱいゲームになる確率が高いから。

「記録より記憶に残る投手」と、引退したら言われるだろう。ジャンケンで勝って先発の座を射止め、そこで完封してしまったり、日本シリーズで8回まで完全試合をしたり、度肝を抜くことをやってのける。トランプの大富豪でいうならスペードの3のようなポジションだ。8回完全をやった際の相手投手はダルビッシュだった。日本シリーズといえばその日本ハム戦だけでなく、西武との2004年も記憶に残っている。その時もスライダーが笑えてくるほど切れていた。

そしてまた今日やらかした。ノーヒットノーランを目前にした9回、再び岩瀬の救援を仰ぐ。降板する山井を思い出すととやはり笑える。そうやって彼は中日ファンの心を鷲掴みにするのだ。本人は悔しいだろうが。