彼女と待ち合わせをした場所は東京の西のほうの知らない街だった。閑静な住宅街だ。僕はそこを歩いている。日中、天気は良いが人をあまり見ない。

その中に一軒、何かの店のようなこじゃれた構えの家があった。数人の外国人の子供がそこに入っていく。どうやら小さな映画館のようだ。特集上映をやっている名画座の装い。中を覗くと、もぎりをしているのも中近東出身らしき男だった。そういえば入った子供たちも褐色の肌と、クリッと大きい目を持っていた。並べられたポスターは僕たち日本人からするとあまり馴染みのない国の映画ばかりである。

入口にはさほど主張しない字で「東京のウルサル」と書いてある。ああ、東京のウルサルってここにあったのか、僕はそう思ったのだった。

夢から覚めた今にして思えば、なぜそう思ったのか皆目見当もつかない。東京のウルサルなんて知らないのだから。そもそもウルサルって何だ。聞いたこともない。潜在的に聞いたことのある単語なのかも知らんと、起きてインターネットで検索したが、めぼしいものはヒットしなかった。

しかしこのネーミングセンスは我ながら秀逸だ。そんな店とか、本とか、歌とか。あってもいいし、貸してもいいし。